ポスターセッション風の個人発表で「伝える力」を伸ばそう!

学習指導のこだわり

 こんにちは,darakeです。

 今回の記事は,学習の成果を発表したり交流する時に最適な方法をまとめています。ポイントは、いかにして「伝える力」を伸ばすかです。

 具体的な内容は次の2点です。

  1. 個人発表にこだわる理由
  2. ポスターセッション風の発表の方法

個人発表にこだわる理由

 学校では,様々な場面で生徒に発表をさせる機会があります。

 旅行的行事のまとめ,総合的な学習の時間のまとめ,9教科における調べ学習のまとめなどがその機会です。

 これらで大切なことは,生徒にどんな力を身につけさせたいのかを明確にすることです。

 darakeが重要だと考えるのは,ズバリ「伝える力」です。

 〇〇の学習を通して,自分が何を感じ,何を考え,何を学んだのかを他者に伝えることを繰り返すことで,「伝える力」を身につけさせたいのです。

 この「伝える力」が重要な理由は,人とコミュニケーションをとる上で基礎となる力だし,自分の思いや考えを他者に伝えることは容易ではないからです。

 にも関わらず,生きていく中で「伝える力」を活用しなければならない場面に数多く出会います。

 例えば,学校や職場の面接の時,自分の企画を社内や他社にプレゼンする時,家族・友人・恋人に自分の思いを伝える時などです。

 だからこそ,「伝える力」を伸ばす訓練が必要です!

 「伝える力」を伸ばすためには,個人で発表させることが1番です。

 グループごとに発表したり,役割分担する方法もありますが,責任の所在を明らかにするという観点からも一人ひとりに発表させる学びの場を作るべきだと考えます。

 そして,様々な学習を通してインプットしたことを,アウトプットする場面として個人発表は最適です。

 では,どのように個人発表をすると「伝える力」を伸ばす訓練として効果的なのでしょうか?

ポスターセッション風の発表の方法

 ここからは発表する時の手順について,5つに分けてまとめています。

 あくまでもポスターセッション風ということで,ポスターを使用せずに発表するやり方を紹介します。

 イメージしやすいように,「職場体験学習のまとめ」を具体例として用います。

学びを振り返り,整理する

 まず発表するための事前準備として,職場体験を通して何を学んできたのかを振り返る場面を設定します。

 具体的には次の3点について振り返り,整理させます。

①体験してみてどのような気づきがあったのか
②その職業に向いている性格,自分との相性はどうだったのか
③働くという行為についての自分なりの考え

 つまりここでは,「伝えたいこと」を明確に整理させることが必要です。この部分が曖昧だと,その発表自体も他者に伝わりません。

 時間を十分にかけて振り返り,整理させましょう。

伝えるための原稿とメニュー作り

 「伝えたいこと」が明確になったら,次は発表するための原稿作りです。

 中学生段階では,発表原稿は必要だと考えます。その場のノリで話せるほど場慣れもしていません。

 この発表の方法では,3分間で発表するというルールのもとで行うため,自分が話すための原稿作りをしなければ3分はもちません。

 スタートの段階で「伝えたいこと」がしっかり整理されていれば,原稿作りはそれほど難しくありません。

 指導者側が誤解してはいけないのは,原稿を作ったからといって必ずしも一言一句その通りの発表を求めてはいけません。

 それでは音読するだけになり,「伝える力」は伸ばせません。

 ここでポイントです。

 原稿が完成したら,話す内容の大まかなメニューを作成させましょう。聞く人の興味を引くようなタイトルを並べたメニューです。例としては,

・衝撃!コンビニの裏側に潜入!
・明るいだけじゃダメ!〇〇に向いている性格
・働く=お金?

 このようなメニューを発表前に配布して,目を通してもらうことで聞き手の興味関心を引き出します。

 このメニューは,シンプルなタイトルのみで構成させましょう。長々と表記すると,導入としての役割が薄れてしまいます。

3分間で伝える練習

 「伝えたい」原稿が完成したら,次は3分間で伝える練習です。

 まずは原稿を見ながら,3分以内に発表する練習をさせます。声に出しながら何度も練習させます。

 次に,原稿を見ないで3分以内に発表する練習をさせます。慣れてきたら,相手に向かって発表する練習も取り入れます。

 発表する時,基本的に原稿を見ることはさせません。原稿を見ると目線が下がり,表現力が弱まるからです。

 大切なことは,作成した原稿を元にして,他者に「伝える」工夫を自分なりに考えさせることです。

 つまり,「伝える力」を伸ばすためには,原稿を頭に入れておくことは最低限で,当日臨機応変に発表できることがベストでしょう。

 ただ,発表中に覚えた内容を忘れてしまった時,覚えた内容を思い出そうと空白の数秒を意図せず作ってしまうのは好ましくありません。聞いている側を不安にさせてしまいます。

 そんな時は,用意してあった原稿をさっと取り出しスムーズに軌道修正する臨機応変な対応が必要です。

 指導者は,原稿を見ないことにこだわるのではなく,「伝える力」を伸ばすという目的を忘れないようにしましょう。

 仕上げとして,3分以内で発表できるようになったら,声量,目線,スピード,間を意識させます。

 中学生なので完璧を求め過ぎず,良い例などを示しつつ,自分の発表に取り入れる工夫をさせることがいいでしょう。

 発表当日までいかに準備を重ね,発表慣れができるかがポイントです。

1人3回は発表する

 発表の当日は,数か所発表ブースを用意します。発表者はそのブースで発表し,聞き手は自由に各ブースを回ります。

 その時のルールとして,聞き手は5人以下にします。あえて人数制限をかけた理由は,全ブースに聞き手が分かれるようにです。

 発表者は,聞きに来た5人に「伝える」ことを目指します。

 そして,発表者は連続3回,異なる聞き手に「伝える」ことを目指します。

 1回目の失敗や修正を2回目に活かし,3回目に最高の発表ができるように場を設定します。

 聞きにくる人が毎回異なるため,発表の仕方にも工夫が必要となります。

 この発表形態の呼び名を,ポスターセッションと名付けました(ポスターは掲示しないので)。

 この利点は,発表者一人ひとりが主役になり,責任を背負います。

 準備不足で失敗した場合は自分のせいです。準備をさぼり,人任せにすることもできません。

 そして,聞き手も自分の興味関心に応じて聞くことができるので,有意義な時間となります。

≪学年60人の場合の例≫
①生徒をA~Eまでの5グループに分ける。
②各グループ内で1~12のブースに分ける。
③Aグループの12人の生徒から発表を開始し,残りの生徒は好きなブースへ移動。
 ※聞き手は同じ発表者のところには行かない。
④Aグループが3回発表をしたら,Bグループの12人の生徒が発表を開始する。

聞き手の学び

 ここでは,聞き手に何を求めるかについてまとめています。

 人から人へ話が伝わる時,話し手だけの努力では限界があります。聞き手が聞く土台を準備しなければ伝わりません。

 話が上手な人というのは,聞き手に無意識のうちに土台を準備させているから上手なのです。

 話すことと聞くことは,同様に難しいものです。

 多くの人は,興味関心の薄い内容を聞くことに辛さを感じます。その辛さが表面化して,居眠りしたり,隣の人とおしゃべりをしたり,別の作業をしてしまいます。

 これはごく自然なことで,子供も大人も大差ありません。我慢できるかできないかの違いだけです。

 ただ,このポスターセッション風の発表における聞き手は,自分の興味関心に応じて聞きにいっているため,聞くことの辛さは緩和されています。

 中学校段階では,聞き手への指導も大切で,発表する人が発表しやすいような聞き方について考えさせてください。

 ポスターセッション風の発表では,全員が話し手にもなるし聞き手にもなります。

 これをうまく利用して,自分が発表する時のことをイメージさせつつ,聞く表情,うなづき,反応,視線などを意識させましょう。

 人前で発表したことがある人ならわかると思いますが,自分の発表中にコソコソ密談されると気になってしまいます。

 また,明らかに退屈な表情をされてもテンションが下がります(発表者にも原因がありますが)。

 以上のことから,自分がされて不快なことは他者にもしない,という暗黙のルールは指導しましょう。

ポスターセッション風の発表で伝える力を育てよう

 今回は,学習の成果を発表したり交流する時に最適な方法についてまとめました。『伝える力』を伸ばすことが目的です。

・学習の成果を発表させる活動は,目的を明確化する。
・「伝える力」を伸ばすことは生きていく上でとても重要。
・「伝える力」を伸ばすには訓練が必要で,個人発表が最適である。
・ポスターセッション風とは造語で,ポスターを掲示せずに個人発表する形態のこと。
・聞き手は興味関心に応じて自由に移動できる。
・発表者は連続3回の発表を通して,聞き手により伝えられるように訓練ができる。
・発表者が主役となり,聞き手が有意義な時間になるような場の設定が大切。
・目的に応じて発表形態を選択する必要がある。
・話す力・聞く力の両方を伸ばすことで,「伝える力」が向上する。

 そもそも,「ポスターセッション風の発表」と勝手に名付けたのは,この発表形態の名前を見つけられなかったからです(名前あるのかな?)。

 なぜ「風」かというと,ポスターを作成しないし,掲示しないからです。

 なぜ発表にポスターを使用しないのか?

 見やすいポスターを作成するだけで膨大な時間が必要です。そこに時間をかけるよりも,発表することに重点を置いたからです。

 また,ポスターを掲示することで発表者がポスターに頼ることと,聞き手の視線がポスターに集中することを避けたいという理由もあります。

 同じ理由で,プレゼンソフトの使用も控えました。

 この発表形態は,道具に頼ることなく個の「伝える力」を育成したいという思いによるものです。

 今回は「職場体験学習のまとめ」を例に示しましたが,個人の「伝える力」を伸ばしたい場合であれば,どのような学習のまとめにも活用できます。

 今回はここまで!

 みなさんが,幸せな人生を送れますように!

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