こんにちは、darakeです。
今回の記事は、あるトラブルの事例を通して、保護者対応で陥りがちなミスを共有しつつ、対応マニュアルとしてまとめていきます。
ポイントは親の子への愛なので、独身で若手の教師は『親ってそういうもんなんだな』と、知っておくことが重要です。
具体的な内容は次の2点です。
- トラブル事例 「故意の種類」
- やってはいけないミス
トラブル事例 「故意の種類」
小学校で起きたトラブルを紹介します。一年間だけ小学校で勤務していた時の話です。
登場人物は次の6人です。
④A君の母親 ⑤Bさんの母親 ⑥C君の母親
トラブル前の背景
トラブルが起きる前の背景を確認しましょう。
BさんとC君は仲が良く、家も近いので下校後もよく遊んでいます。その母親同士も良好な関係です。
A君とC君も学校では良好な関係を築いています(少なくとも表面上はそう見えます)。
A君はBさんに好意があり、『Bさん好き~』等と口に出して言うこともありました。それを聞いたBさんが『A君嫌だ~』と拒否することもありました。
Bさんを追いかけたり、『チューしたい』なんてことを言っているのも周囲は確認しています。
BさんはA君をあまり好意的には思っていません。
A君がBさんに好意をもっていることは周知の事実で、C君に『A君はBさんのことが好きなんでしょ?』といじられても、笑顔で対応していました。
トラブル当日
ある日の下校中の出来事です。
BさんとC君が一緒に歩いていました。後ろから追いかけてきたA君が、その2人に近づきトラブルが起きました。
Bさんが派手に転び、顔を地面に叩きつけケガをしたのです。
その様子を、自宅前で待っていたBさんの母親とC君の母親は遠目で見ていました。
※遠目のため、なぜ転んだのかは見えていない。
すぐに駆け付けたBさんの母親は、大事を取ってすぐに病院に連れて行きました。
C君や周りにいた他の生徒の証言から、A君は『ごめんね』と言ってすぐに別の友達と去っていったそうです。
トラブル後
この段階では、A君が突き飛ばしたのかぶつかったのかは不明です。ただ、転んだBさんは『押された』と言っていて、近くで見ていたC君は『後ろからA君が走ってきて、Bさんにくっつこうとしていた』と言っています。
近くにいたのは全員小学校低学年のため、証言に信憑性はありません!
Bさんの母親はあまりにもひどいケガだったので(女の子の顔ということもあり)、担任に連絡を入れました(Bさん母親はA君家の連絡先は知らなかったので)。
担任は一切その時の状況を知りません。なぜなら下校中の出来事なので。
連絡を受けた担任は、A君家に連絡をして、Bさん母親から聞いた経緯を伝えました。
担任から連絡を受けたA君の母親は、Bさん家に電話をしました。
その電話の内容をまとめると、
・途中からA君の擁護になってくる。
・Bさんに日頃から嫌なことを言われていた。(A君母親)
・C君にBさんを好きなことをからかわれていた。(A君母親)
・A君は嫌なことを嫌と言えない性格である(A君母親)
・日頃の不満が爆発した可能性がある(A君母親)
・Bさん母親は謝罪してくれると思っていた分、矛先が変わったことで激怒。
・関係者全員集まって、学校で話し合いがしたい(A君母親)
・C君家にもBさん家から連絡をしてほしい(A君母親)
電話で母親同士口論となりました。
その後、Bさんの母親はC君母親に事の経緯を伝え、C君母親も不信感を募らせました。なぜなら、Bさんがケガをした本件にC君は関わりがないからです。
そして、怒り困ったBさん母親は、再び担任に連絡をしました。
darake解説
上記トラブルについて、少しだけ補足していきます。
まず、Bさんが転んでケガをした時の詳細は誰もわからないということです。近くにいたのは全員小学生なので、誰に聞いても証言はあやふや。
真相は神のみぞ知るです。ただ、Bさんの顔のケガからすると、軽くぶつかった程度ではないことは明らかです。
次に、A君がBさんを押した時、じゃれ合いの延長での故意なのか、日頃の恨みからの故意なのかで、話が全く異なります。ケガの具合から故意であることは間違いないでしょう。
じゃれ合いの延長での故意ならば、当事者はA君とBさんで、Bさんの母親も事を荒立てるつもりはなかったでしょう(真摯な謝罪さえあれば)。小学生だし。
A君の母親が主張する日頃の恨みからの故意ならば、当事者はA君とBさんとC君となり、A君は故意に過度に押したことになり、その原因を作ったのはBさんとC君にあったことになります。
被害側であったBさん家が加害側となり、加害側で謝罪すべきはずのA君家が被害側となるわけです。さらには、一緒に歩いていただけのC君も当事者兼加害側に浮上してしまうわけです。
A君の母親の電話によって、シンプルだったはずのトラブル(ごめんね⇒いいよ)が、非常にややこしくなってしまったわけです。
やってはいけないミス
さて、ここから担任教師目線の話となります。自分が担任だったらと想定しながら読んでください。
この保護者を巻き込んでの生徒トラブルで、やってはいけないミスを確認しましょう。そうすることで最悪を防ぐことができます。
被害にあった子と保護者への雑な対応
このトラブルにおいて、BさんとBさんの母親には慎重に対応しなければなりません。
病院に行くほどのケガをしているので、安易に処理してはいけません。ましてや女の子の顔です(男の子親より敏感)。
十分に話を聞き、Bさんの母親の気持ちに寄り添う必要があります。Bさんの母親が求めているのは、丁寧かつ心からの謝罪だけです。
担任をしていると、当事者の間に立ち、加害の生徒と保護者に謝罪を促すような場面がよくあります。
この伝え方を誤ると、結果的に雑な謝罪になったり、今回のように加害と被害が入れ替わる結果になりかねません。雑な謝罪ほど相手の神経を逆撫でするものはありません。
子供の証言から真実を探そうとする
このトラブルにおいて、真実を探してはいけません。
なぜなら、絶対に見つからないからです。トラブル時に近くにいたのは小学生低学年のみ。Bさんの母親とC君の母親は遠目でしか確認していません。
ましてや、A君の母親はその場にいないし、担任もいません。
この状況で、真実を探そうとするのは不可能です。親は全員、自分の子の言うことを信じたいものです。それが親の愛だからです。
絶対にやってはいけないことは、当事者の子と親を呼び集めての話し合いです。地獄絵図しか待っていません。そこに居合わせる子どもたちがかわいそうです。
トラブルをごちゃ混ぜにしない
どんな理由があろうとも、他人を傷つけたことには反省が必要です。その機会を大人が奪ってはいけません。
まずは、A君に対して行為の反省をさせる必要があります。この時、故意の理由が何かは関係ありません。
Bさんがケガをしたという事実があるだけです。そのケガを負わせたのはA君に間違いがないので、その問題を別の問題にすり替えてはいけません。
A君の母親が電話で訴えていることは問題のすり替えです。担任はそこに流されてはいけません。
殺人を犯した人が、警察で『イライラしてやった』と言っても、殺人の事実は変わりません。
今回の件について、A君の保護者は子を信じる愛ゆえに、誤った判断をしてしまいました。まずは母親がA君を指導し、心からの謝罪をBさんとその母親にすべきだったでしょう。
もし、A君の母親が訴えるような事実があるならば、別の問題として対処しなければなりません。
親の出番をコントロール
年々、子どものトラブルに親が介入する機会が増えている気がします。中学校でも増えているので、小学校ならばなおさらでしょう。
親が我が子を心配する気持ちは批判できるものではありません。ただ、心配は信じるの反対言葉です。過度な心配は、我が子を信じていないことと同じです。
何でもかんでも首を突っ込もうとする保護者をコントロールするのは担任の役目です。特に、小学校低学年であれば子ども同士で解決できるトラブルの方が多いでしょう。
担任は、子ども同士で解決できる環境を整え、ピースメーカーとして助言していきましょう。
子を信じる親同士が対峙した時、トラブルの解決は非常に困難になることが多いです。
おわりに
保護者がらみのトラブルは、とても厄介であることは間違いありません。
スムーズに解決できないと、保護者との信頼関係に亀裂が入る可能性があるからです。だから、そうならないような対応策が必要なのです。
ポイントをまとめます。
・子どもの証言だけでは真実は明らかにならない。
・子を信じ、守ろうとする親の愛を侮らない。
・問題をきちんと分けて対応する。
・子ども同士のトラブルには極力親を介入させない。
保護者の子への愛情は、時に暴走します。その暴走に油を注いでしまうと、止めることは不可能となります。
ぜひ、油を注がない冷静な目と対応力を身につけましょう。
今回はここまで!
みなさんが豊かな人生を送れますように!
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